徒然の記〈秋色のシンフォニー〉
錦繍の候。
秋も深まり、色づく木々が、目にも鮮やかな季節になりました。
気がつけば、今年も早や11月。秋も本番です。
東京も、朝・晩は、ひんやりするようになり…
<立冬>の昨日(7日)は、北風ビュービュー、<木枯らし1号>が吹き荒れたそうです。
聞くところによると、2024年の<夏>は、世界の平均気温が「観測史上、最も暑かった」そうですが…
季節は、確実に冬に向かっているようです。
山は暮れて 野は黄昏の芒(ススキ)かな (蕪村)
もちろん、都会には<山>も、<野原>も、<芒(ススキ)>もないけれど…
毎年この時季になると、なぜか、かつて住んでいた兵庫県・芦屋市で何度も見た、<六甲山>の麓(ふもと)の秋の風景を…
枯れ果てた土手沿いに連なる、茫洋とした原野の風に靡(なび)く、おびただしい数の芒(ススキ)の群れを思い出し…
寒々しく、人恋しくなるのです。
せめてもの癒しといえば…
今の時季、テレビで見かける「そうだ、京都行こう」の美しい京都の秋のCМに、やたら郷愁とロマンを感じてみたり…
同じロマンでも、秋の夜長、いまだマイブームの『令和ロマン』のYouTubeなんぞを見て、しばし笑ってみたり…
前回にも書きましたように…
ささやかな夕餉の食卓に、<秋刀魚>や<栗ご飯>、<柿>などの秋の味覚を添えて、「秋だ、秋だ」と納得するぐらいっきゃありません。
そんな中で、世の中のほうも、日々の空模様同様、変化し続けています。
まずは政治界隈の動きとしては…
自民党の<裏金問題>について、様々な憶測が飛び交う中で…
国会は、久々に<党首討論>を開き、衆議院を解散。
その後、総選挙があり…
自民党の<石破茂>氏が、『内閣総理大臣』に就任しました。
聞くところによると、なんでも解散から総選挙まで、僅か18日という、戦後2番目のスピード選挙だったそうですが…
結果は、自民・公明による連立与党が、過半数には至らず、歴史的大敗を喫しました。
一方、対する野党のほうは…
<立憲民主党>と<国民民主党>が、思いのほか躍進して、与野党の攻防が、更に高まりました。
政府は、11月11日に<特別国会>を召集して、『首相指名選挙』を行うそうですが、果たして<総理>に指名されるのは…
自民党の<石破茂>氏か?…
立憲民主党の<野田佳彦>氏か?…
あるいは、躍進して急浮上した、国民民主党の<玉木雄一郎>氏か?
今回は、同じ野党の<日本維新の会>は、辞退したようですが…
結果が気になるところです。
ところで、1966年に起きた、いわゆる<袴田事件>では…
一家4人が殺害された強盗・殺人・放火事件の<やり直し裁判>で、検察側は、裁判所側に<上訴権の放棄>を伝え…
これによって、<袴田さん>の無罪が確定したそうです。
恐ろしい話ですが…
袴田さんは、初めから 否認のまま逮捕され、過酷な取調べの結果…
虚偽の自白を強要され、不当にも<死刑判決>が確定したそうです。
戦後の日本らしい、すっきりしない冤罪事件ですが…
事件から58年…。長きに亘って本人、親族共々翻弄され続けた<袴田事件>も、これでようやく、終止符が打たれたことになります。
そういえば、俳優の<西田敏行>氏が、亡くなりました。(享年76歳)
あの「ハマちゃん」役でもお馴染みの『釣りバカ日誌』のシリーズは、国民的ともいうべき映画でしたが…
ほかにも、『西遊記』、『池中玄太80キロ』、『白い巨塔』、『ドクターX~外科医・大門未知子~』のシリーズなど、代表作も多数。
歌手としても、『もしもピアノが弾けたなら』で<紅白歌合戦>に出場するなど、マルチで活躍されました。
抜群の演技力と、存在感。
ちょっぴり漫画チックで、親しみやすい笑顔は、今も忘れられません。
心よりご冥福をお祈りいたします。
そうそう、海の向こうの<アメリカ大統領選挙>では、どうやら共和党の『ドナルド・トランプ』氏(78歳)が、民主党の『カマラ・ハリス』氏を破って圧勝したそうです。
詳細は分かりませんが…
今回は、もしかしたら「初の女性大統領誕生?」とも想われていた中で…
見事<トランプ>氏が返り咲いたことになります。
果たして今後の<世界情勢>は…???
そうこうしているうちに、東京も、ようやく20度を下回る気温になり…
秋を感じるようになりました。
それにしても…秋って、ホラ、じっくり何かと向き合うのには、絶好の季節かもね。
<読書>の秋。<音楽>の秋。<芸術>の秋…。
たまには、クラシック音楽でも…な~んて思っていたら…
ふと、思考が<少女時代>にタイムスリップして…
遠い、遠い昔、まだ小学生(5年生)だった頃、東京から、長野県・松本市内の<旧・開智小学校>に転校した当時の事を、思い出しました。
因みに、この<開智小学校>というのは、明治の中頃建てられ、90年近く使用された歴史的な小学校で…
校舎は、のちに<重要文化財>に指定され、現在は(松本城の近くに)移転して、近代学校建築としては、初めて<国宝>に指定された小学校です。
お洒落な洋風の外観で、<バルコニー>や<高楼>があり…
校内も、彫刻を施した階段や、ステンドグラスの窓などモダン様式で…
初めて父に連れられて登校したときは、ドギマギしたものでした。
担任は、音楽大学を卒業したばかりの「高橋先生」という若い教師で…
どの授業よりも「音楽の時間に力を入れ、何かにつけてクラス全員を音楽室に連れて行き、難解なレコードを聴かせ、感想文を書かせ…
その曲の背景に隠れた物語性などを、熱く語ってくれたものでした。
我々子供にとっては、眠くなるだけの退屈な音楽でしかありませんでしたが…
後になって、それらが、<バッハ>や<ベートーベン>、<シューベルト>、<モーツアルト>などのクラシック音楽だったと知りました。
若くて、熱血漢で、涙もろくて…
時々、授業の合間に、張りのあるテノールで、<オペラ>を歌ってくれたりする、ちょっと変わった先生でもありました。
先生との思い出は――
ほかのどのクラスよりも<合奏>や<合唱>に力を入れ…
ワーグナーの『双頭の鷲の旗の下に』、モーツアルトの『トルコ行進曲』…
地域の『音楽会』には、率先して参加していたことや…
先生が盲腸で入院した時、一人で(花束を持って)お見舞いに行き、恥ずかしくて、なかなか病室に入れなかったこと。
先生が恋をして…
ある日、友達と先生の下宿に遊びに行った時、<保健室>の女の先生が来ていて、楽しそうにしていたのを見て驚いたこと。
家庭訪問の時、陽気で社交家の母と意気投合して…夜まで話し込み、
帰宅した父とお酒を酌み交わすうちに…
酔っぱらって…最後は、千鳥足で帰ったことなど…
高橋先生にまつわるエピソードは、尽きません。
また、ちょうど同時期、自宅の敷地内に、父の上司(支社長)の社宅があり、
大学生の「お兄ちゃん」がいて、よく自室のステレオで、クラシック音楽の
LPレコードを聴かせてくれました。
そして彼もまた、高橋先生同様、それぞれの曲の素晴らしさを熱く熱く語ったものですが…
後年になって、<労音>などで生(なま)の<オーケストラ>を聴くようになり、少しずつその醍醐味を知るようになりました。
今でも(もちろん詳しくはないけれど)時々、むしょうにクラシック音楽を聴きたくなるのは…
もしかしたら、それら諸々の環境が、影響しているのかもしれません。
この松本市内の社宅には、中学2年生まで住んでいましたが…
社宅の前の通りの向こうには、小さな<本屋>さんがあって、跡継ぎなのか、店員さんなのか、20歳前後の「お兄ちゃん」がいて…
時々、立ち読みをしている私を誘い、自転車の後ろに乗せて、一緒にお得意さんに<本>を届けに行くことがありました。
想えば…どこかスリリングで、危険な香りがしないでもありませんが…
夕暮れの畦道(あぜみち)を、本屋のお兄ちゃんの自転車の後ろに乗って、ふざけ合っている光景が、原風景のように脳裏に焼き付いて離れません。
どこからか、美しいピアノの旋律が流れてくるような…。
無垢で、クリーンで、古き良き時代の思い出です。
この記事へのコメント
昔むかし、ある人からビバルディの「四季」のレコードを貰いました。盤が擦り切れるほど聞いた記憶があります。
ありがとうございます。
「六甲山」って、そうだったんですね。
当たり前のように読んでいましたが…
懐かしい響きです。
ビバルディの「四季」、私も大好きです。
好いですよね~。
じっくり聴いてみたいものです。
その昔、日本が高度成長期の頃、どの家庭でもステレオを買って、LPレコードを聴いた時代がありましたが…
最近は、めっきり音楽を聴く機会が減りました。
60日を過ぎても更新されなかったので、何かあったのかと心配しましたが、本日、無事更新されているのを見てホッとしました。
郷愁… もの想う秋ですね。
夢子さんの回想を読ませていただいて、甘く哀しいBGMが流れる中の、清らかに澄んだ風景が思い浮かび、美しいセレナードを聴いた時のように胸がキュンとなってしまいました。
夢子さんの人生は人々を魅了してやまない一つの美しい音楽のよう。
一方、自分の人生は不協和音そのもの。
更新を気にかけていてくださっていたんですね。
ありがとうございます。嬉しいです。
でも旅人さん。
不協和音は、私も同じ。
いえ、旅人さん以上に、不協和音の中で生きてきたかもしれません。
今は、すべてが後悔だらけです。
でもお互いに、頑張って生きましょうよ。